迷宮の君

「咲里さん…」

「…はい?」

「今までずっと一人で
辛い思いしてたんだね…。」


咲里さんが、
暴力を振るわれていたことは
医者に言われてわかった。             
あの日、咲里さんに
手を振り上げていた男だろう。

咲里さんの頭に
思わず手を乗せて
頭をなでた。


「…智也くん」

「よく頑張ったね…。
もう一人で辛い思いしなくてイイんだよ」


ツラい思いをしていた咲里さん。

彼女を包みこむように、
そっと優しく抱きしめた。


「…智也くん…ッ……
ずっと……グスッ……こわかった…ッ
…戻りたく……ないよ」


咲里さんは
腕の中で泣き崩れていた。


「咲里さん、大丈夫だよ?
俺がアイツを近づけない。
俺が貴女を守るから。」


「ッ…ホン、ト?」

「ほんとだよ。俺が守る。」

「ッ…ありがと」


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