今夜、お別れします。


田丸さんとのキスシーンを桐谷が見たのか見なかったのか、ずっと気にはなっていたけれど、桐谷からはあの後連絡は一切なかった。


会社で会っても目を逸らされて、話しかけようとしても冷たい目で遮られた。


桐谷が田丸さんとのキスを見ていたのだとしたら、それは確実に浮気だと思われても仕方なくて。


だとしたら、彼が私を避けるのは当然だと思った。


私は桐谷と千歌ちゃんのキスシーンを見た時、胸が潰れるかと思うくらい苦しかった。


それは、私が桐谷を好きだから。


でも桐谷は?他の人とキスした私をどう思ったんだろう。

既に、千歌ちゃんに心が傾いているのなら、彼には引っ掻き傷にもならないだろう。

それよりも付き合っている人がいながら他の人と触れ合った私を汚いと思っているかもしれない。


彼の中ではもう私とは既に終わっているのかもしれない。


あえて口も利かず、避け続けて、いつの間にか自然消滅を狙っているのかもしれない。


可能なことだ。


誰も私達とのことを知らないんだから、なかったことにするのは簡単だもの。


卑屈な自分がまた顔を出してくる。


彼に与えられた自信は、彼によってこんなにも簡単に潰されていく。




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