今夜、お別れします。


定時に仕事が終わり、田丸さんとの約束の場所へ向かおうと会社を出た。


待ち合わせ場所は会社から徒歩で10分くらいの場所にあるカフェで、遥とも何度か行ったことのある店だった。


目的地に向かう足取りは、重い。

多分10分では着かないと思うほどノロノロと歩く。

溜息が溢れて止まらない。


そんな中スマホが鳴りだした。


まさか、田丸さんからの電話だろうか?約束の時間はまだ先のはずだ。


そう思いながらスマホを取り出して液晶に映った名前を見て息をのんだ。


まさか、桐谷からかかってくるとは思わなかった。


会社ではあれだけ私を無視していたのに、電話なんかかけて来てどう言うつもりなんだろうか?


もしかして、別れを告げるのに電話で済ますつもりなんだろうか?


そうされても文句は言えないのに、そんな終わり方は嫌だと思う。


せめて、顔を見て話がしたかった。

もし別れ話だったら、会って話すべきだとちゃんと言おう。

それくらい、言ってもいいはずだ。

だって桐谷だって、浮気したんだから。


未だ鳴り続けるスマホをタップして、耳に当てた。


< 21 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop