バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
第五章
一睡もできずに夜が明けた

ロキはいつものようにずっと私のそばにいてくれた

子供達を送り出して、家事や夕食の準備を手早く済ませて朝のうちに家を出る

晴れてるのはお昼までで午後からはまた大雪になる見込みだ

車を少し走らせば、眺めのよい丘の上にある小さな墓地につく

天気のよい日ならとても気持ちいい風が吹くこの場所は、今年の大雪でこんな寒くて雪がたくさんある場所にお参りにくる人なんていないから当然除雪もされていない

ごぼごぼと足をとられながら目的の墓石まで何とか進む

台座まで雪に埋まった墓石の前に花を手向ける

「今日は学校だから、今年は私だけでごめんね」

こんな寒い風が吹いていて台座も雪に埋まっているので、ろうそくもお線香もなしだ

「二人ともどんどん身長が伸びていて、もう少しで追い越されそう」

ただあの人が寂しくないように仏花ではなく、とびきり明るい色のガーベラの花束を持ってきた

「お兄ちゃんはママに内緒にしてるけど女の子から手紙をもらってたって教えてくれたの、あの子は特に貴方にまたどんどん似てきてるよ」

亡くなったあの人には生きてるときも亡くなっても明るく暖かい家庭をあげたい

「あなたの視線の意味がちょっとわかった気がするよ」

しんみりするのはうちのカラーじゃない、だからガーベラの花束なんだ
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