《短編》ガラクタ。
「あたしのなんだから、勝手なことするな。」


「キスしてやるから許せよ。」


「嫌よ。」


結局、そのまま引き寄せられるように口付けを交わし、あたしも甘いんだろうとは思うけど。


アラタが居たら世界が華やぐような気がして、あたしは何を捨ててもコイツだけは手放したくないと、本気でそう思った。



「お前こそ、勝手なことすんなよ。」


「上等じゃない。」


アタラ以外じゃあたしなんて手に負えないだろうし、アラタだってあたしナシじゃダメなんだから。


お互いぶっ飛んでて、そんな関係が一番性に合っているんだ。



「早く治したら、あたしのこと抱かせてあげる。」


「へぇ、楽しみ。」


言葉とは裏腹な余裕ぶった顔が、雲の隙間から僅かに漏れた朝日に照らされて、キラキラ輝いているようにも見えた。


ガラクタで、社会にとって必要なんてなかったとしても、あたし達には互いが必要なのだから、それだけで十分なのだ。


ひどく甘美な気持ちに酔いしれてしまい、セックスよりも高級な美酒を呑んだようだと、珍しくあたしはそんなことを思った。








END

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