《短編》ガラクタ。
「でも、俺もアラタさんのアドレス知らない。」


「それ以前にモッシュ、俺もお前のアドレス知らねぇよ。」


「…そうだっけ?」


何ともまぁ、緩い会話を繰り返すのは、運転席と助手席に座るモッシュくんとコージくん。


あたし達なんて常にこんな感じで、あたしがアラタ以外の携帯番号で知ってると言えば、モッシュくんのだけなのだから。


それも、迎えに行くからってことで、昨日知ったばかり。



「でも、アラタさんの絵ってマジですごいよね。
こっちも創作意欲掻き立てられるってゆーか、負けられない感じ。」


苦笑いを浮かべながら、コージくんはそう言った。


彼は将来的に創作和食のお店を出したいらしく、今は修行中なんだと言っていた。


チャマくんは電飾等の演出を手掛ける仕事をしているらしいし、サブも古着屋で仕事をしながら服を作ったりで、やはり自分のブランドを持つのが夢らしい。


モッシュくんはウェブデザイナーってやつらしく、難しいことは分かんないけど、でも、アラタ曰くみんなアーティストなんだとか。



「マイさんも、専門の入学決まったんでしょ?」


「まぁね。
仕事にするかは別として、やっぱ資格は必要欲しいよね、って。」


アラタやみんなと居れば、何か向上心ムラムラって感じになって、負けず嫌いのあたしは結局、専門への願書を提出したのだ。


別に他人の爪なんて未だに興味は薄いけど、それでもあたし自身、技術を身につけたいと思うようになったから。



「まぁ、19だし大丈夫でしょ。」


「えっ、嘘でしょ?!
俺、マイさんって普通にタメだと思ってました!」


「…サブっていくつ?」


「22っす!」


「ふざけんなよ、馬鹿パンク!」


道中は異常なまでにうるさくて、その時点で若干疲れてしまうのだけれど。


そんなこんなで個展の会場まで辿り着き、あたしはやれやれと言った具合に肩を落とした。



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