【短編】本日、総支配人に所有されました。
───頭の中をグルグル駆け回る思想を他所に支配人の休憩室を出てから急いで身支度を整え、再び支配人の元へと向かった。


「失礼致します。先程は有難う御座いました」


ノックをして、返事を頂いてから支配人室へと足を踏み入れる。


「…あぁ。化粧直しをしてきたんだな?さっきは化粧が溶けるほど、頑張ってくれて有難う」


無我夢中で制服のままでお風呂掃除をして、汗だくになったのは仕方ない事。


熱気で蒸し風呂状態の中、お風呂の水滴を拭きあげるんだから、化粧もとろけます。


オマケにブラウスも少し濡れてしまい、ジャッケットで濡れたブラウスを隠せたのが救い。


支配人・・・、褒めてるのか、けなしてるのか、分かりませんよ?


クスクスと笑う支配人にムッとして、顔に出してしまう。


パソコンを操作しながら、「明日、明後日の宴会場の予約だ」と言い、手招きされたので画面が見える場所まで近寄る。


「会議、夜はパーティブッフェが入っていたりして、レストランのセッティングスタッフが足りないので、明日は一日、レストランヘルプに一緒に行くぞ。……何だ、不満か?」


「いえ、そうではありません。ただ…」


気になる事があって言葉に詰まり、すぐには返答出来ずにいると支配人が不審そうに聞いてきた。


レストランヘルプに行く事に不満はない。


不満はないのだが、支配人ともあろう方が私に構っていて良いのだろうか?


他にも仕事があるのではないか?


「…お気遣い頂いて有難いのですが、支配人には支配人の仕事があるのではないですか?お荷物になるなら、私…辞めます。辞めたら元の…」
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