【短編】本日、総支配人に所有されました。
支配人が口角を上げてニヤリと笑ったが、その微笑の意味は明日の午後に痛い程、理解する事になるとは知らずに・・・、今はただ、星野さんが豹変するなんて有り得ないと思っていた。


・・・が、そのまさかで、披露宴のセッティングが終わった後のスパルタとも言えるサービスの特訓は半泣きになりそうな位に辛かった。


基本的なトレーの持ち方、歩き方、グラスの置き方、皿の下げ方などダメ出しがなかった項目は一つもなく、落ち込む。


唯一、褒められた点は、お辞儀の仕方と笑顔のみ。


支配人は溜まっている自分の仕事をこなしつつも様子を見に来てくれたが、ただ見守るだけで声はかけずに遠くから見ては去って行くを繰り返していた。


特訓の成果もあり、披露宴のサービスは粗相する事もなく無事に終了。


配膳会(派遣のレストランサービススタッフ)から来ていた方々は、手馴れたもので立ち回りも早く、私や中里さんは唖然に取られていたが、負けたくない!との一心で乗り越えた。


披露宴が終了し、お客様をお見送りした時、動きすぎてふくらはぎがパンパンになり、重だるく疲労感がどっとのしかかる。


「良く頑張ったね、二人共。お疲れ様!」と言って、星野さんが私達の肩を叩いた時、無事に終わったんだと安心した。


披露宴の最中、星野さんは披露宴のバンケットマネージャーとして新郎新婦に付き添い、各関係者との連携を取りながら、成功へと導いた。


星野さんの立ち回り、凄く素敵で惚れ惚れしたし、披露宴の介添人(別名アテンダー)の女性も輝いていて憧れな存在。


自分自身も輝けた一日になったと思う。
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