【短編】本日、総支配人に所有されました。
あれ・・・?


覚悟を決め、ドキドキしながら支配人が言葉に出すのを待っていたが・・・一向に言われない。


それどころか、スイートルームの部屋の事前チェックを一緒にしている。


高級ホテルの最上階のスイートルーム、立ち入ったのは人生初だが、同時に人生最後になるかもしれない。


フカフカなキングサイズのベッド、窓から見える素敵な眺望、丸みを帯びた大きなお風呂、その他、全部が特別な部屋。


「よし、問題はないな。そろそろ、鈴木様がお戻りの時間だからフロントに戻ろうか…」


「鈴木様にまた謝るんですか?」


「……そうだな、頭を下げるのには変わらない」


・・・・・・・・・?


良く分からないが、再度、鈴木様に頭を下げるらしい支配人。


支配人が再度謝る事になるとは、鈴木様は相当御立腹なんだろうな。


私を側に置いているのは、鈴木様に謝らせる為だったんだと解釈する。


「あ、あのっ、支配人っ!」


「何だ?」


最上階に属するスイートルームを出て、エレベーターを待っている間に支配人に話をかけた。


「私が先に謝ります。鈴木様と野々原様に失礼な事をしたのは事実ですからっ」


「その件は了承済だから、蒸し返すな。謝りたければ明日のチェックアウトの時にしろ」


冷たく言い放ち、私は身体がゾクッとした悪寒を感じた。


冷酷、鬼軍曹・・・、異名がつけられるのも納得出来る。


「今日は黙って着いて来ればいい」


エレベーターが到着し、二人で乗り込むとそんな言葉をかけられた。


不敵な笑みを浮かべた支配人に心が反応して、胸がドキリとした。


さっきまでは、あんなに冷たかったのに、今の微笑みは反則でしょう───・・・・・・
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