キミが笑ってくれるなら、それだけで…
「あー!やべー!!」

花宮の事考えてたら

寝るのが遅くなって

寝坊しちまった!!

校庭を走り、掲示板の

クラス表を確認して

更にダッシュする。

チャイムは鳴ったけど、先生がまだ

来てなかったらセーフだよな!

「急げ!急げー!」

階段を2段飛ばしで登り、廊下を

突っ走って扉を開ける。

「セーフ!!」

勢いよく飛び込んだ。

その瞬間、前方から怒号が飛んだ。

「アホ!間に合っとらんわ!!」

あちゃー、やっちまった!

新学期早々に遅刻なんて最悪だ…

トボトボ歩く俺の視線の先に

花宮が居て、ドキリとした。

うわ!マジか!?

同じクラスだ!

それにしても、やっぱ綺麗だよな

花宮って…

サラサラの黒髪は背中まで真っ直ぐに

伸びてて、色白で、手も足も

強く握ろうもんなら折れそうなくらい

華奢だし。

それに、普段は笑わないのに

あの笑顔は反則だよなー。

花宮の後ろを通るとき、一瞬

すげーいい匂いしたし…

花の匂い?

ってか!!

俺、変態みたいじゃん!!

始業式が終わって、教室では

恒例の自己紹介。

俺の席は1番前だから、後ろ向いて

話した方がいいよな?

振り返った瞬間、花宮が視界に入って

俺の頭は馬鹿になった。

自己紹介をしながら、花宮を

真正面から見ると…

やっぱ綺麗だ。

大きい瞳と綺麗な鼻筋に

形の綺麗な薄い唇…

でも、なんでだろ?

やっぱり俺には

泣いてるように見える。

無表情なのに、心は泣いてる…

そう見えるのは俺だけか?

そんな事を考えてたら、間抜けな

自己紹介になっちまったー!

変な奴って思われただろうな…

俺ってほんと馬鹿!

そして、花宮の番が来て

高くて柔らかい声に驚いた。

ちゃんと聞いたのは初めてだ。

見た目綺麗なのに、声可愛いとか…

ヤバイってそれ!!

全員の自己紹介が終わって、解散と

なると同時に花宮は逃げるように

教室から出て行った。

直接話したかったな…

噂とかそんなんじゃなくて

直接話してみたいんだよなー。

へこむ俺は、ふらふらと窓際に

立って、校門を抜けるであろう

花宮の後ろ姿を目で追っていた。

その時、明らかに校門から離れ

校舎裏に歩く花宮を見た俺は、

何も考えずに走っていた。

校舎裏に何があるんだ?

普段から誰も行かないあんな所に

行く理由…

馬鹿な俺が考えても分かる訳ねーし!

とにかく俺は知りたかったんだ。

花宮の事を…

花宮が消えた校舎裏から、

柔らかな声が聞こえてきて、

俺はそっと覗いた。

その視線の先には、白猫と遊ぶ

無邪気な笑顔をした花宮が居た。

やっぱり、笑うと可愛い…

「今日は夜から雨が降るらしいから、

雨避けの傘と幸ちゃん用のタオル

持って来たよ。

濡れないようにね」

そう言って、白猫の寝床らしい所に

傘を広げて置いた花宮。

蓮司の言う通り、花宮は優しい子だよな

優しい顔をして笑って、白猫を

撫でる姿に、俺の心臓はありえない

くらいにドキドキしている。

けど、猫に手を振り

こちらを振り向いた花宮の顔は

さっきまでとはまるで違う、

無表情の顔。

なんで、そんな悲しそうな顔

してんだよ…

花宮にそんな顔をさせる理由って

一体何なんだ?

知りたい。

俺が笑顔にしたい。

他の誰かじゃなくて、俺が…

こんな気持ちになるのが、

好きってことなのか?

ドキドキするのは花宮が初めてで

気になったり、考えたりなんて

今までの俺にはなかった。

だからこそなのかもしれない…

もっと知りたいと思ってしまうのは。












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