Perverse
感情の赴くままに行動できるのは凄いけれど、絶対に真似はしたくない。



働く女性として決して褒められた態度ではないし、さすがに私も気分を害する。



女としては…まぁわからなくもない。



だからといってあの態度はないだろうけど。



私は溜息をつき、デスクに置かれたパターンをアイテムと品番別に整理して得意先へと向かった。



新しい商品を紹介するのは気持ちが高揚するもの。



少なくとも仕事をしている間だけは嫌なことを全部忘れることができた。



すっかり遅い帰社になってしまったせいで、デスクに戻ると誰も残っていなかった。



新商品の注文を入荷前に取った場合は店舗名と数量を明確にし、物流センターの方に取り置き伝票を回さなくてはならない。



そうすれば商品が入荷したのち数を確保してもらえ、確実に出荷してもらえるというわけだ。



さらさらと伝票をおこし終わると、柴垣くんのデスクを見つめる。



伝言のメモ紙やインデックスがたくさんだ。



この中の1枚なら目に止まらないかもしれない。



そう思って私はおもむろに引出しからインデックスを取り出して一言書いた。



それを目立たないところにペタリと貼ってみる。


「いやいや、ダメでしょ」



慌てて剥がしたインデックスには、赤ペンで小さく書いた『すき』の文字。



その伝えられない言葉を捨ててしまうことは出来なくて、ポケットにしまい家のコルクボードにちょこんと貼り付けた。
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