私の遠回り~会えなかった時間~
お母さんは真顔でそんな事を言う。

彬さんと私は思ってもいない方向に進む話に気まずくてだまっている。

「叔母さん、俺は直ぐにでも知紗と結婚したいんだけどさ…。」

彬さんがぼそりと言った言葉に過剰反応した私は思いきり顔を上げた。

「知紗にもう少し時間を与えてあげたいんだ。だって俺みたいな奴がいきなり現れて結婚しろと言われたって戸惑うだろう?もっと知紗に今の俺の事を知ってもらいたいし、俺ももっと今の知紗を知りたい。」

彬さんの言葉は、私の気持ちを代弁しているかのようだった。

「私ももう少し今の会社で頑張りたいな。せっかく頑張って入った会社だもの。」

まだまだ入社2年目の春を迎えたばかりの私。

自分で納得いく仕事をしてみたい。

「休みが減るから、知紗には大変かもしれないけど、今のままでもう少し様子を見ないか?」

私は彬さんの言葉にうなずく。

「じゃあ、家事を仕込ませてもらうわね。覚悟しなさいよ、知紗。」

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