私の遠回り~会えなかった時間~
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「遅かったな。」

じろりと私を見る彬の視線は鋭い。

「化粧を落としてこなかったのか。服装とまるで合ってない。」

そこで彬が笑顔を見せた。

その表情に今までこわばっていた私の身体と心は少しほぐされた。

「ははは…。」

私は何とも言えない作り笑顔しか出来ない。

「知紗…?」

「会社の命令なんだって。大きなプロジェクトなんだって。…私、断れないみたい。」

彬が私の肩に手を置き、私の顔を覗き込む。

「知紗…、もう決めてしまったって事なのか?」

私は俯いて、彬から顔を逸らした。

「私、今のまま仕事がしたいよ。美容院の仕事も手伝いたいよ。」

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