私の遠回り~会えなかった時間~
私は慌てて和室に向かう。

「どうしたの?」

私はそこで談笑をしている加代さんとお母さんを見つけた。

「あれ?加代さん、まだ居たんだ。」

私の出した声に、加代さんは本を掲げてニッコリと笑う。

「今、あなたのお母さんに趣味の本を借りて読んでいたの。何かを始めようと思って。ところでどうしたの?何か用事でもあった?」

私はその向かいに座るお母さんと加代さんを交互に見ながら、慌てて言う。

「さっきの電話は彬さんからだったの。また呼び出されたんだけど、私忘れ物でもしたのかな?」

私のその様子に、加代さんとお母さんは顔を見合わせてクスリと笑った。

「彬は融通が利かないからね。早く行ってあげてよ、知紗ちゃん。」

加代さんは余裕でそう返してきた。

「用件は分からないんだけど、とにかく行ってくるね。」

私が和室を出ようとすると、加代さんの声が飛んだ。

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