ねぇ先輩、名前をよんで。
思い出の写真がスクリーンに映される。
優さん……。
いつだって写真の中で笑っている優さん。
今でも彼女は笑っているだろうか。
その朗らかな笑顔に、
私はゆっくり目をつぶり手を合わせた。
「これより〜年度、卒業式を終了します」
こうして卒業式は終わる。
少し涙ぐんでいる人や
唇を噛み締めている人がいる中。
私は最後に
先輩が私の横を通っていくのを確認した。
先輩……。
心の中でそうつぶやいた時、ちょうど私の横を通った先輩が
ふわり、と笑ったような気がした。
表情が、明るかった。
もう先輩と出会った頃とは違うんだ。
これでもう。
思い残すことは何もなくなった。
静かに目を閉じる。
そしてもう一度開けると
体育館の窓からピンクに色づいた桜が見えた。
私には似合わない桜。