ねぇ先輩、名前をよんで。
清水くんは手をクロスすると、
静かに話し始めた。
「俺さ、見送り行くか?って悠に聞く前
自分と葛藤してたんだ」
「えっ」
「俺がそう言わなければ、
悠は自ら見送りに行きたいなんて言わないだろうなって、
分かってたから……」
そよそよと風が吹く。
春の匂い。
優しい風は清水くんの髪を揺らした。
寂し気に揺れる彼の瞳。
「それなら言わなくてもいいじゃないかとか
知らないフリしたっていいじゃんとか正直思った」
思いつめたような表情に
ぎゅうっと心がしめつけられる。
いつも私の前では
寂しそうに笑う清水くん。
どうやったら、
彼を笑顔に出来るだろう。
もう、遅いかな。
私ではダメかな。
ぎゅっと手を握りしめる。