君の日々に、そっと触れたい。

「友達になりたい」

【李紅side】



中学校、という場所は、俺にとってはずっと憧れた場所だった。

あそこには嫌な思い出もあったけど、元々勉強をすることは好きだったから。


………だけど、どうしてだろう。

真っ白い病室の中に居た頃よりずっと、この空間が息苦しく感じるのは。


「おい、誰が話しかける?」

「俺やだよ」

「女子に頼めばよくね?」


クラスの男子たちが繰り広げる、丸聞こえの会話。

その中の一人がどうやら俺に用があるらしい。だけど話しかけることを躊躇して、お前が話しかけろよ、と互いに押し付けあっている。


俺は、クラスの中で完全に浮いていた。




仕方ないのだと思う。

小6の頃に何度目かの再発が分かってからはずっと入院生活で、入学式こそ頑張って出たものの、結局中1の間は一度も学校に行けなかった。

だから初めて学校に顔を出したのが中2に上がった後なんて、クラスに馴染めてたらその方がおかしい。


俺はこんな瞳や髪の色をしてるせいか、見た目はすごく目立つから、なかなか学校に来ない俺に多くの人が違和感を感じ、かなり早い段階でどこからか「病気で入院してるらしい」という噂が広まった。

一年ぶりの学校はすごく緊張したけど、不思議と女子は進んで話しかけてくれて、すぐに仲良くなれた。

だけど何故か男子は基本的にいつも遠巻きに俺を見ていて、なかなか仲良くなれない。なんなら、嫌われてるのかもしれない。

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