御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「やるって決めたんです」

「お前は意外と強情だったな」

後部座席に並んで座りながら、鷹凪はふぅと息をついた。

「ずっと家にこもっていたお前が外交なんて」

「先生は『もう大丈夫だ』と言ってくださいましたよ」

「そうじゃない、俺の気持ちの問題だ」

沈痛な面持ちで幾度目かのため息をつく。よっぽど不安なようで、やるせなさそうに唇に親指を当てた。

「表舞台に立てば、どんなに完璧に行動しても、非難する輩が現れる。お前に辛い思いをさせたくない」

「……それも覚悟しています」

これから先、きっと奏もマスコミや政治家に叩かれることになる。
それが鷹凪の評価にも直結するのだから、考えただけでも恐ろしくなってしまう。

けれど、このまま鷹凪の背中に隠れ続けてなんの役にも立てず生きるのと、どちらが恐ろしいだろう?

そう自分に問いかけた末の結論だった。
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