御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「私は表舞台に立つつもりもありませんから。鷹凪さんも、そうしてほしいと言っていたし」

(……もしかしたら、鷹凪さんはこんな自分を隣に立たせるのが恥ずかしいと思っているのかもしれない……)

本当は不安にかられる奏だけれど、今さら彼の嫁として表に立ちたいなどとは言えないし、そもそも務めあげる自信もない。

「なにも政治を補佐するだけが秘書官の仕事ではありません。あなたの護衛を兼ねているんですよ。見てください」

篠田はリビングの端に設置されたモニターに玄関前の監視カメラの映像を写し出した。

昨日よりも取材陣の数が増えている気がする。

「絶対に外へ出てはいけません。……失礼な質問をしてくる輩もいますからね」

「……そうですね」

テレビのワイドショーを見ていればわかる。特に今朝の囲み取材の質問は酷かった。

『とてもお忙しそうですが、奥様と夫婦の営みをされる時間は取れていますか?』

そんな下世話な質問に答える必要はないと奏は思うのだが、鷹凪は無下に扱うこともせず、ふんわりと笑って『はは、どうでしょうねぇ』とうまくごまかしていた。

奏だったら、訊かれた瞬間にフリーズして赤面してしまうだろう。それこそ彼らの思うつぼかもしれない。
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