御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
「……はい」

『……奏?』

ついさっきテレビから聞こえてきた声とは違う、低くて、ゆっくりとしていて、甘みがかった鷹凪の声がスピーカー越しに奏の鼓膜を震わせた。

「はい……お疲れ様です」

『……久しぶり。帰れなくて悪い。また寂しい思いをさせてるな』

「いえ、大丈夫です。毎日テレビで鷹凪さんの姿を見てますから」

テレビには本当に救われている。今彼が頑張っている、それが目で見てわかるから、不安にならなくて済む。

『今も、中継を見てたのか?』

「はい」

『……カッコ悪いところを見せたな』

「え?」

『だから心配になってメールをくれたんだろう。違うのか?』

心配だったのは確かだけれど、カッコ悪いだなんて思っていない。鷹凪の戦う姿は誰よりも輝いて見える。……それは妻のひいき目なのだろうか?

「いつだって鷹凪さんは格好いいですよ」

『それ、本気で言ってるのか? ノロケか?』

そうかもしれないと思い、奏はふふふと小さく笑った。自分の夫が日本中を魅了するのだ、こんなにも誇らしいことはない。
そんな奏に、鷹凪もフッと息を漏らした。
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