副社長の一目惚れフィアンセ
もしもお姉ちゃんが生きていたら…もう子供が生まれていたんだろうか。

こんなふうに、公園で遊んでいたりしたんだろうか。

キャッキャッと拙い足取りで駆けていく幼い子ども。

それを「待て待てー」とゆっくり追いかけるお母さん。

幸せの象徴のような風景だ。

私自身、フルタイムで働いていたお母さんより、お姉ちゃんとこんなふうに遊んでいたことのほうが多かったような気がする。

…なのにうまく思い出せないのは、自分の記憶に自信が持てないからかもしれない。

「…どうした?」

「え」

ハッと顔を上げたら、ナオが心配そうに眉を寄せて私を見ていた。

私はそんなに暗い顔をしていたんだろうか。

幸せな家族像に癒されていたつもりだったのに。

ナオに心配をかけないように、微笑みながら問いかけてみた。

「…ナオは子ども好き?」

ナオは目を細めてキャッチボールをしている親子を眺めながら、「好きだよ」と即答した。

「俺は一人っ子で育ったから、兄弟喧嘩は憧れだった」



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