副社長の一目惚れフィアンセ
カーテンの隙間からさす陽が眩しくて目が覚めた。

どうやら泣きつかれて眠ってしまったらしい。

私はベッドの上にいて、ナオが運んでくれたんだとすぐにわかった。

本当は休んでいなければいけないのはナオのほうなのに…

ナオは昨夜ちゃんと眠れたんだろうか。

リビングに行ったら、ナオはクスクス笑いながら何かを読んでいた。

「ナオ…?」

「あ、明里。おはよう」

ナオの表情は明るく、だいぶ顔色もよくなったようだ。

「何か見てるの?」

「ああ。明里に詩織のことを打ち明けたら見せようと思ってた」

ナオはパタンと閉じた本のようなものを私に手渡した。

「詩織の日記帳だ」

『Diary』と書かれた単行本より少し大きい厚めのノート。

ずいぶんビビットな色合いで、水玉模様が描かれている。

落ち着いているお姉ちゃんのイメージとだいぶ違う。

「詩織が亡くなる前、俺の家に来たときに置いていったんだ。
本当は詩織の親御さんに返せばよかったんだけど、これだけはなんとなく手元に持っておきたくて…」

固い表紙をめくれば日付欄があって、その下に罫線が引いてある。



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