冷酷な騎士団長が手放してくれません
アダムが連れて来たのは、真っ白な髭を顎に蓄えた老人だった。薄くなった頭髪に、銀フレームの丸い眼鏡をかけている。
落ちくぼんだ目に、シワの刻まれた額。手にした杖には、真鍮の玉が装飾されていた。
「お久しぶりです」
「うむ。君にまた会えて嬉しいよ、ニール王子」
その老人とニールは、勝手知ったる仲のようだ。
ソフィアは、内心困惑していた。
(どなたかしら……?)
ニールは以前に、ソフィアの喜ぶ客人を夜会に呼んだと言っていた。察するに、目の前の老人こそがその特別な客人のようだ。だが、ソフィアはその老人に見覚えがない。
「こちらは、俺の婚約者のソフィアです」
ニールの声に、ソフィアはスカートを摘まみながら、「ソフィア・ローレン・アンザムと申します」と腰を落とした。
「おお、そなたが噂のご令嬢か」
ふごふごと老人は答えると、落ちくぼんだ瞳で、食い入るようにソフィアを見つめた。老人の奥深い視線には、他人を丸裸にするような威力があった。
「なるほど」
色素の薄くなった老人の瞳に、穏やかな色が宿る。
「美しいご令嬢だ。身も心も、山の空気のように澄んでおる。こんなに美しい人にお会いするのは、アメリ様以来かもしれぬ」
老人の言葉に、ソフィアはそろりと視線を上げた。
「アメリ様とは……、もしかして獅子王のお妃様のことですか?」
「そうだ」
「あなたは、もしかして……」
ソフィアの心の中に、一つの仮説が生まれる。現ロイセン王の祖父である獅子王の妃に謁見があり、ソフィアが喜ぶ人物だというこの老人。
「もしかして、『獅子王物語』を書いたアレクサンドル・ベル様……?」
恐る恐るその名前を口にしたソフィアに、老人は「ピンポン。正解だよ」とおどけて見せた。
落ちくぼんだ目に、シワの刻まれた額。手にした杖には、真鍮の玉が装飾されていた。
「お久しぶりです」
「うむ。君にまた会えて嬉しいよ、ニール王子」
その老人とニールは、勝手知ったる仲のようだ。
ソフィアは、内心困惑していた。
(どなたかしら……?)
ニールは以前に、ソフィアの喜ぶ客人を夜会に呼んだと言っていた。察するに、目の前の老人こそがその特別な客人のようだ。だが、ソフィアはその老人に見覚えがない。
「こちらは、俺の婚約者のソフィアです」
ニールの声に、ソフィアはスカートを摘まみながら、「ソフィア・ローレン・アンザムと申します」と腰を落とした。
「おお、そなたが噂のご令嬢か」
ふごふごと老人は答えると、落ちくぼんだ瞳で、食い入るようにソフィアを見つめた。老人の奥深い視線には、他人を丸裸にするような威力があった。
「なるほど」
色素の薄くなった老人の瞳に、穏やかな色が宿る。
「美しいご令嬢だ。身も心も、山の空気のように澄んでおる。こんなに美しい人にお会いするのは、アメリ様以来かもしれぬ」
老人の言葉に、ソフィアはそろりと視線を上げた。
「アメリ様とは……、もしかして獅子王のお妃様のことですか?」
「そうだ」
「あなたは、もしかして……」
ソフィアの心の中に、一つの仮説が生まれる。現ロイセン王の祖父である獅子王の妃に謁見があり、ソフィアが喜ぶ人物だというこの老人。
「もしかして、『獅子王物語』を書いたアレクサンドル・ベル様……?」
恐る恐るその名前を口にしたソフィアに、老人は「ピンポン。正解だよ」とおどけて見せた。