冷酷な騎士団長が手放してくれません
「あの時から、二人は誰にも入り込めない奇妙な主従関係で結ばれているのです。でも、男女の仲とは意味が違いますよ? 主人と飼い犬のような、言葉のいらない絆に似ています」


片手をブンブンと振って、ライアンはあっけらかんと否定した。だがニールは、そうだろうかと訝しむ。


ソフィアの披露目の夜会の際、クラスタ家のリンデルの策略で人前に霰もない姿をさらけ出す羽目になった時、ソフィアは真っ先にリアムを呼んだ。


目の前にニールがいるのに、ソフィアの意識は全力でリアムを探していた。


あの情景を思い出す度、胸に焼けつくような傷みが走る。







「だから、リアムが近くにいる限り、ソフィアに心を開かせるのは難しいでしょう。それでも、ソフィアは芯のあるいい子です。きっと、公爵夫人としてあなたのお力になるでしょう。だから、ソフィアのことをよろしくお願いします」


ライアンの声には、今までの呑気な口調から一転し、兄としての真摯な響きが込められていた。


ニールはライアンの声に答えるように頷いたが、気持ちは別の方を向いていた。
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