冷酷な騎士団長が手放してくれません
私の下僕

アンザム卿配下の騎士団が旅立って二ヶ月。リルべに本格的な冬が訪れ、湖が凍結する頃、ロイセン王国とハイデル公国の戦争は終結した。


圧倒的な強さのロイセン王国を前に、ハイデル公国は無残にも敗れ去った。そしてロイセン王国に吸収される形となり、事実上国は消滅した。


数多の犠牲者を出した長年に渡る両国間の因縁の争いは、ついに幕を閉じることとなったのだ。






戦争の終結から一ヶ月、リルべの騎士団も無事故郷に戻った。


けれどもその中に、リアムの姿はなかった。


最後の戦いまでリアムは雄々しく戦ったが、ロイセン王国側が勝利を確信した頃には、リアムとダンテの姿はどこにも見当たらなかったという。






「あの強いお二人が、やられることなど考えられません。ですから、どこかで必ず生きていると、我々は信じています」


騎士達は彼らを率いたリアムの失踪を、涙を流していつまでも悔やんでいた。






リアムの失踪の話を聞いても、不思議とソフィアはショックではなかった。


リアムが死ぬなんて、あり得ない。そんな確信が、心のどこかにあったからだ。


けれども冬が終わり、リルべの緑が生き生きと色づく春になっても、リアムがソフィアのもとに帰って来ることはなかった。
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