恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「・・・なに。お母さん」
「他に就職先のあてでもあるの?」
「・・・ない。今はまだ」
「だったら聞くだけでもいいじゃない。ただ、その話聞いたの、先週くらいだったからねぇ。もしかしたら、事務の人はもう決まったって言われるかもしれないけど」
「え?あ・・・そぅ」
「それにね、岸川さんは良い人よ。お店の設計だって親身になってやってくれたし、できるかぎりお母さんの希望を取り入れてくれた。お客さんに対して、それは当たり前のことでしょって言えばそれまでだけど、それだけじゃないのよ、あの人は。お店がオープンしてからも、お仕事でどうしても来れない時をのぞいて、お客として、ほぼ毎日コーヒーを飲みに来てくれる。岸川さんとのお仕事は終わったんだけど、その後も、何て言うのかしらね・・縁を切らずにいてくれる。壮介さんとは違って誠意のある人よ、あの人は」

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