恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「熊本よ。でも近くなるって言ってもねぇ、もう一緒には住まないわ。息子も一人暮らしを満喫してるみたいで、近くなるのは良いけど、一緒に住まなくてもいいって断られちゃったし」
「そうですか・・」
「うちはいわゆる転勤族で、大体3年毎に引っ越してるの。国内をあっちこっちね。今回は5年だったけど、主人の年齢からして、あと2・3回くらいは覚悟しといた方がいいかもね」と言う土井さんに、私はウンウンと頷いた。

「まぁ最終的に落ち着いたら、二人で定住する家を持とうって、主人とは話してるのよ。そのときは岸川所長に設計頼むわ」
「俺に何頼むんですか?土井さん」

突然聞こえた男の人の低い声に、私はビックリしながら、その声に引き寄せられたように、後ろをふり向いて・・・立ち上がった。

「・・・・・・」

・・・岸川さん、だ・・・。

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