恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
おうちに、帰ろう
「翔。翔。しょう・・・」

壮介さんが立ち去った後も、ペタンと地べたにへたりこんでいた私は、翔を抱きしめたまま、うわ言のように息子の名を呟いて、しばらくその場で泣いていた。

・・・もしかするとこれは、あの人がしかけた罠かもしれない。
一旦立ち去ることで私を安心させておいたところで、またすぐここに引き返してくるという・・。
私を徹底的に痛めつけようとしているあの人なら、そういう・・ずるい手段だって使いかねない。
ていうか、そういう手段を使うのは、いかにも姑息なあの人らしいじゃない?
とまで思い至ったとき、翔を抱えてでも、すぐさま 実家の中へ入った方がいいと思った。
その方が「安全」だと、頭の片隅では分かっていたから。
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