恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
シンデレラの、微笑み(番外最終話)
「どうした、湖都」

私を背後から抱きしめている岸川さんの低く、安定した声が、お風呂場にこだまする。
それだけで私の心は落ち着いていく―――。

岸川さんに身を委ねつつ湯船につかっている私は、満足気な溜息をホゥとつくと「ぅん。ちょっと・・思い出してたの」と呟いた。

「いろいろと。この3ヶ月は本当に・・いろいろあったなぁって」
「そうだな」

・・・今から3ヶ月と少し前、主人だった壮介さんが亡くなった。
双方が同意をした離婚届を持って、後は役所に提出すれば、晴れて離婚成立・・・というところまで行っていた私たち夫婦だったけれど、その直前で、まさか壮介さんが亡くなるとは、私はもちろん、壮介さん本人も思ってなかったはずだ。
当然ながら、離婚届を役所に提出することもなく、正式に離婚もしない―――というよりできなかった―――まま、私は壮介さんの妻として主人を弔うことになり、私が喪主を務めることになった。
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