恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「なんか、ノリエが言いそうな言葉だと思ってつい言っちまったが。湖都ちゃんにはウケたな」
「・・・ノリエ、さんって・・」

途端に笑うのを止めた私に、岸川さんは「俺の妹」と言うと、ニッコリ笑った。

「妹さん、ですか」
「ああ。俺には妹が一人いる。そいつの名前がノリエだ。“紀”州の“恵”みで紀恵。分かる?」
「あぁ・・はい。分かります」
「なんかさ、湖都ちゃん見てると紀恵思い出したんだ。見た目とか全然似てねーのになんかこう・・構いたくなる?・・・いや、違うな。護りたくなる、みたいな感じだな」

一人納得して頷いている岸川さんを、私は胸をドキドキさせながら見ていた。
だって・・・男の人から「護りたくなる」なんて言われたの、生まれて初めてだし。
しかも、初めて会って間もない人から・・・。
ドキドキしない方がおかしいよ!

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