溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
「……」

なにも言わない蔵人さんをそっと窺うと、手で口元を隠して目を逸らした。
ちらりと向かった視線があうと、蔵人さんの顔が近づいてくる。

「……和奏は可愛い」

ちゅっ、私の額に口づけを落とすと、蔵人さんは眼鏡をくいっとあげた。

ふたり並んでケーキを食べる。
なんだか蔵人さんとこんな風に食べるケーキはいつもより何倍もおいしい気がするけど、気のせいかな。

「クリーム、ついてる」

私の唇につくクリームを指で拭うと、蔵人さんはぺろっと舐めた。

「ん?」

不思議そうに蔵人さんの首が少しだけ傾く。
私の心臓はドキドキと妙に自己主張していたし、顔もなんだか熱くてまともに蔵人さんの顔を見られない。

気づきたくはなかったが少しずつ、私は蔵人さんを好きになっていた。
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