溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
私が起きあがると、蔵人さんはくいっと眼鏡をあげた。

「ああ。
リオンの前に飼ってた犬。
保護センターからもらってきたその犬はいつもおどおどしてて、以前の和奏にそっくりだった」

自分がおどおどしていた自覚はある。
前の私が酷い人間だったっていうのも。

「でも、たくさん愛情を注いだら、いつもにこにこ笑ってるみたいな犬になった。
和奏もそうなったらいいなと思ったんだ」

うっとりと目を細めて蔵人さんに笑われると、胸がきゅーっと切なくなる。

蔵人さんに愛情を注がれて、私はまともな人間になれた。

でも私には蔵人さんに恩返しできるものがなにもない。
抱かれることすらできない。

そんな自分がひたすら悲しかった。
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