溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
「……はい」

昨晩、君嶋課長のお父さんに対する態度を理解した。
きっと結婚相手に逃げられたのをまだ言ってないからだ。

「俺の実家が小さなワイン醸造所をやっているのはすでに知っているな。
俺の親は共同経営者の娘と結婚して、跡を継いで欲しいと思っている」

「……はい」

「けれど俺は、跡を継ぐ気がない」

ふぅーっ、小さく息を吐き出すと、君嶋課長はコーヒーカップをソーサーにかちりと戻した。

「この結婚が決まって、父はようやく俺を後継者にするのを諦めた。
それがなくなったとなればどうなると思う?」

ぐいっと少し身を乗り出すと、君嶋課長は私に顔を近づけた。
間近になった君嶋課長の顔には珍しく、はっきりと「困ってる」と書いてある。
確かに、そんな理由があれば親に結婚を取りやめるなど言いにくいだろう。

「その、また跡を継がせようとするかもしれませんね」
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