溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
あとは服のことを聞かれたが、カジュアル婚だからスーツでいいと告げるとほっとしていた。
電話を切ると一度深呼吸して、メール画面を立ち上げる。

……えっと。

当たり障りのない文章を打ち込んで父に送ったが、返信はない。
落ち着かないまま眠れる夜を過ごし、朝になって短く、“出席はしてやる”とだけ返ってきてほっとした。



結婚式前日の金曜日は半休取って、田舎から出てきた両親と祖父母を迎えに行く。
もちろん、君嶋課長はなんの問題もなく休みをくれた。

君嶋課長の仕事が終わるまで、近場を少し観光した。
楽しそうな祖父母と違い父は不機嫌で、母は父の機嫌を窺っている。
この状態で君嶋課長と食事なんて気が重い。

待ち合わせのホテルに行くと、すでに君嶋課長は待っていた。

「君嶋蔵人(くらと)です。
このたびはお嬢さんを私にくださり、ありがとうございました」
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