俺のトナリ
俺のトナリ


地方のローカル線。
基本的に1時間に1本しか来ない電車は、ラッシュ時だけ3本に増える。
1本目はほとんどが会社員。2本目、3本目はほとんどが高校生だ。
ラッシュ時でも、座れる程しか乗っていないこの路線。仲のよいグループで集まるため、だんだんと電車内での定位置が決まってくる。

先頭車両、前から2番目の左側の扉の前。
そこが、彼女の定位置だ。
反対側の扉の前が俺の定位置。

去年度まではいかなかったから、たぶん1年生。
この辺りでは1番の進学校である、丸北高校の制服を着てる。
凛と立つ姿が印象的で、初めて見たとき'きれいだな'と思った。

いつも、通学時は1人でいる彼女だけど、帰宅時は何人か友達と一緒にいるのを見かけたことがある。友達と一緒に話す時の笑顔は、花が咲いたように可愛くて。
その笑顔に、俺は一目惚れしてしまった。

彼女の高校と違い、俺の高校は偏差値はそんなに高くない。どちらかといえば、部活に力を入れている。俺自身もバスケで県大会準優勝したけれど。
なにより、軽いやつが多い。
下手に話しかければ軽いやつだと思われそうで、話し掛ける勇気は出なかった。

扉と扉。電車の幅と同じだけの彼女との距離は、近いようで遠い。




彼女はいつも、窓の外を眺めてる。

特に海が好きらしい。トンネルを抜け、海岸線に出ると、彼女はいつもうれしそうに微笑むから。
窓に写る彼女の表情を盗み見る。
たまに目が合う気がするけれど、きっとそれは俺の勘違い。
俺の願望がそう見せているだけだろう。

あの笑顔を俺に向けてくれたなら………
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