白雪姫 ~another story~

「あの...」

「はい?」

私が廊下を歩いていると高校生くらいの男の子に話しかけられた。

どうやら患者さんではないようだ。

「どうかされましたか?」

と私がたずねると

「僕のことわかりますか...?」

と男の子は恥ずかしそうに言った。

え...?

覚えがない。

おかしいなあ...

患者さんのことは覚えてるはずなのに

そんな私...忘れて...

私がどうにか思い出そうとしていると

「覚えてませんよね」

と男の子が少し寂しそうに言った。

待って!

と言いたかった。

しかし正直に

「ごめんなさい...」

と私は頭を下げた。

本当に申し訳ない

こんなこと今までになかったのに...

と私が落ち込んでいると

「頭をあげてください、覚えてないのは当たり前ですから」

とその男の子は笑った。

「え?」

私が顔を上げると

「白雪姫」

と彼が言った。

「なんで...」

「俺、昔入院してて白雪姫に絵本を読んでもらってたんですよ」

と照れ臭そうに男の子は笑った。

「ほんとに!?」

私は思わず大声を出してしまっていた。

いろんな人がいっせいにこちらを見る。

「あ、す、すみません」

恥ずかしい...

周りの人たちに謝り男の子を見ると、彼は笑っていた。

「なんだか白雪姫に似てる」

と彼は嬉しそうに言った。

私が結姫ちゃんに似ている...?

「ほんとに?」

「うん」

嬉しい。

初めてそんなことを言われた。

「ありがとう」

いつのまにか私はお礼を言っていた。

「いえ」

と彼は笑った。

「悠人 ~」

とどこからか彼を呼ぶ声がした。

「急がなきゃじゃない?」

と私が笑って言うと

「はい。じゃあ、また来ます」

そう言って男の子はお辞儀をすると声のした方に走っていった。

「走ったらあぶないよ」

私がそう言うと

彼は振り返り

「ごめんなさい」

と立ち止り私の方を見た。

その顔はなんだか懐かしそうに見えた。

なぜだろう...


すると彼は私に手を振り、再び歩きだした。

「また来てね」

そう言って私は彼に手を振った。






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