天使は金の瞳で毒を盛る
もう、やだ。全然なに考えてるかわからないのに。基本、意地悪なのに。

すごく、優しい。

でもね、だからこそ思うんだよ。

「あのね、榛瑠、そんなに完璧でなくていいと思うよ」

榛瑠が私を見た。綺麗な金色の目。と、その目が緩む。

優しい顔だった。息が止まるかっていうぐらい優しい顔をして、彼は私にキスをした。

…ほんとうにわからない。わからないままいつも心を持っていかれる。

榛瑠の唇が離れる。聞いてみたい。聞いていい?

「ねえ、私のこと、好きなの?」

榛瑠がじっと私を見る。…早くして!自分の言葉に耐えられない。

「内緒です」

彼はにっこり笑って言った。

「ちょっと、なにそれ!」

この心臓音どうしてくれるのよ!

「当てたら教えてあげます」

「絶対?ほんとにその時は…」

って、あれ?

「…その時はもう、教えてもらう意味ないじゃない!当たってるんだから!」

榛瑠が声を出して笑った。からかってばっかり!

「じゃあ、聞きますけど、一花はどうなんですか?」

え、どうって。

顔が一気に熱くなる。

「…教えてあげない!当てたら教えてあげる」

では、それで、と榛瑠が涼しい表情で答える。

その顔を見ながら思う。

きっと全部バレてるのに。きっと私の気持ちなんてわかっているだろうのに。

なんでなの?

もらえない言葉と注がれる笑顔の落差に胸が痛い。

でも、もしかしたら、もしかして、とも思う。

泣きたくなる。泣いて困らせたらなんて言うんだろう。

思いっきり泣いて困らせて、大好きって言ってやりたい。

いつかはそれを言うことができる日が、来るのかなあ。
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