天使は金の瞳で毒を盛る
不意の昼食会
月曜日、私は横目でチラチラ榛瑠の座るデスクを見ていた。

週末、私が寝ている明け方に彼は帰ってしまっていた。

熱下がったのかな…。見る限り大丈夫そうだけど、どうなのかしら…。見た感じがあてにならない人だから…。

そんなこと考えながら廊下を歩いていると、榛瑠がこのフロアの先にある休憩スペースにいるのがちらっと見えた。自販機やカウンターなどがあるスペースだ。

いつもは人がいるけれどこの時間は珍しくいない。

私は思い切って声をかけた。

「四条課長、今いいですか?」

「どうかしましたか?」

榛瑠が自販機のコーヒーを飲みながら言う。

私は近づくと、小さい声で言った。

「熱、下がったの?」

「大丈夫ですよ、ご心配をおかけしました。」

榛瑠はいつもの淡々とした声で言う。

私は本当は内心ドキドキしていた。あんまり近づきたくない、のか、近づきたいのかも混乱している。

でも、こういう時はためらっていると、どんどんおかしな方向に行っちゃうからね。

「本当に下がったの?仕事して平気?」

「平気ですよ、そう見えませんか?」

見た感じで判断できないから聞いてるんでしょ。

榛瑠が少し声を落として言った。

「お嬢様には大変ご迷惑をおかけしました。いろいろと」

…急に色々フラッシュバックしてきた。顔がほてるのがわかる。ていうか、榛瑠、絶対、今、笑ったでしょ!

「ほんと、ダメダメに弱ってたよね」

頑張って嫌味をいってみる。

「…弱るのもたまにはいいんじゃないですか、お互いに」

お互いってなによ、私は別に!
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