天使は金の瞳で毒を盛る
「え?どうしたの急に?」

「なんか、聞いてみたくなりました。あ、いいです、無理にいわなくて。すみません」

私、なに言ってるんだろう。でも、なんか答えてくれそうな気がして。

「まあ、あの、います」

「あ、やっぱりいらっしゃるんだ。いいなあ、佐藤さんの彼女だったらしあわせそうです」

「え、まあ、いや、そんな事ない、か?いや、あってほしい、かな」

私は声を出して笑ってしまった。すごく羨ましい。

「いいなあ、羨ましいです。私も優しい彼氏欲しいな」

「うん、まあね」

佐藤さんがちょっと困ったように曖昧に笑った。

「あ、すみません、困らしちゃって。」

「あ。違う違う。俺の彼女って、あんまり優しい人じゃないから、つい…」

「え?そうなんですか?」

「そうなんだよ。…でもまあ、優しくされるのが目的で好きになったわけじゃないし。あ、でも、優しくはしたいんだよ。って、俺、なに語ってるんだ?」

佐藤さんは赤くなりながら困っていた。ああ、羨ましいなあ、って思う。

「好きになったら仕方ないですよね。嫌いでも、好きになっちゃったら仕方ないですものね」

「そうだね。でも、あれだね、…勅使川原さん好きな人いるんだ。」

え?今度は私が赤くなる場面だった。

「え、いや、その」

「誰か知らないけど、うまくいくといいね。尾崎には諦めるよう言っておこうか?」

「あ、それは大丈夫ですから。」

もう、ちゃんと言ったし。

「そっか、わかった。力になれることあったら言ってね。」

そう言って佐藤さんとは別れた。

空を見上げる。青空に雲が流れている。そう、仕方ないことがあるのだ。
< 74 / 180 >

この作品をシェア

pagetop