Room sharE


キラリと光るその光。小さな小さな――――


『へへっ。ダイヤモンドみたいだろ?』


タナカさんの声が若干遠のいて聞こえるのは、スマホを耳から離しているからだろう。私が見た小さな小さな一粒のダイヤは……何てことない、タナカさんのスマホから発せられる光だった。


それがチカチカ光っては消え、また闇夜に浮かび上がっては消える。良い歳した大人の男なのに、時折少年に戻るのだから―――


真冬のこの時間帯、僅かな外套はあるけれど四十階下のタナカさんの姿は当然ここからじゃ分からなくて……でも何となく想像できた。


タナカさんは子供みたいに笑う。


タナカさんは無邪気に手を振る。


タナカさんは





タナカさんは――――……





唐突に泣きだしたくなった。


こんな風に無邪気になれたのははじめてだ。まるで恋を知ったばかりの少女に戻れたような―――いいえ、恋を知ったばかりでもこんな風に純粋に誰かを想うことなんてできなかった。


気付いたら私、妙に割り切ることしかできない―――“大人”だったんだ。


でも今、タナカさんのおかげで“少女”に戻れた気がした。


「………世界一きれいなダイヤをありがとう」目がしらに溜まった涙がつんと鼻の奥を刺激して、私は慌てて鼻を啜った。



『今日さ、ホントは



会いたかった――――』




タナカさんの言葉がまたも私の心を熱く熱く―――させる。







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