獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
アメリの返事を聞くなり、カイルはより鮮明に微笑んだ。


悪魔、悪獅子、人でなし。そんな異名で世間を騒がせたことが嘘のように、純真な笑みだった。


差し出されたアメリの手を取るやいなやカイルは立ち上がり、アメリの華奢な体を自分の胸に閉じ込める。


カイルの温もりを感じながら、アメリはこれ以上ないほどの幸福を感じていた。





「愚かな俺を、許せ」


加速する心音とともに、耳もとで切羽詰まった声が囁かれる。


「クロスフィールドから生きて戻れたならば、すぐにお前を抱きたい」


救いを求めるような、甘い響きだった。


「はい」


目を閉じ、鍛え上げられたカイルの胸板に身をゆだね、アメリは厳かに返事をした。


「必ずお戻りになると、信じてお待ちしております」





閉じた瞼の向こうに、輝かしい真珠色が溢れ出す。


幸福の色言葉を持つその色が、アメリの世界を染めていった。


しばらくの別れを惜しむように、二人はいつまでも離れようとはしなかった。


夜空では初秋の三日月が、くるおしいほどの互いへの愛情に満ちた二人を、静かに見守っていた。
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