獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
唐突に頭上から爆音が聞こえアメリはビクッと肩を竦ませた。


爆音は止む気配がなく、人々が逃げ惑う足音も聞こえる。


「何があったのかしら……」


アメリは立ち止まると、震えながら辺りを見渡した。


すると、暗闇の中に少年が倒れているのを見つける。


しきりに肩で息をしていて、ひどく苦しそうだ。アメリは、迷わず彼に近づいた。


金色の髪をした、美しい少年だった。どこかしらカイルを彷彿とさせる面影に、親近感が湧く。


「苦しいの……?」


アメリの声に、少年がうっすらと瞳を開ける。深海を連想させる紺瑠璃の瞳が、姿を現した。だが意識が朦朧としているのか、視界が定まらない。







アメリは少年の脇に座り込むと、優しくその頭を撫でた。アメリが頭を撫でると気分が安らぐのか、少年は幾分か顔色が良くなっていくのだった。


「大丈夫よ、あなたは強いわ。私には分かるの」


アメリは、幾度も少年に囁きかける。


「信じなさい、自分を。そして、愛の力を」


そう言ったあとで、我に返る。


たまらなくカイルに会いたくなって、泣きそうになっていた。


カイルは、どこにいるのだろう。アメリは、もう永遠に彼に会えないのだろうか。






しんみりとした気持ちになりながらふと顔を上げれば、いつからいたのか、幼い少女が驚いたようにこちらを見ていた。


蜂蜜色の髪の、愛らしい少女だ。温もりを閉じ込めたブラウンの瞳には、どこか懐かしさを感じる。


アメリは立ち上がると、少女に近づいた。


少女からはアメリの姿は見えていないようで、一心に地面に倒れる少年を見つめているばかりだ。


「彼のことは、あなたに任せたわ。私はもう、行かなくてはいけないの」


アメリは少女の額にキスを落とすと、カイルを求めて暗闇の中を再び突き進んだ。













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