雪と制服とジャージ
「ひっっ、氷上先生っ」
「こんな朝早く、誰かと思えば濱崎か」

先生は黒い傘を畳み、あくびを一つしながら、スリッパに履き替えようと下駄箱に手を伸ばした。
当然ながら、ぎゅうぎゅうに押し込んだ紙袋に眉を寄せる。

「ん。何だこれ」
「あああ、あのその」
「何だよ」

目の前で、先生が包みを出す。恥ずかしいし、突き返されたらどうしよう……。

「チョ……チョコです。バレンタインなので、先生にはお世話になってるし……」
「世話はしてねえけど。何。これ、くれんの」
「はい……それ、あげます……」

先生の質問をそのままいちいち答えると、ぶふっと笑われた。

そして、先生は少しだけ背中を丸めて、「ありがとな」と優しく微笑む。

きゅうと胸が鳴った。
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