狼女と狩人の恋愛事情
chapter-1

「孤独の襲撃」


「200の誕生日、おめでとうございます!アイリス様!」
「……えぇ、ありがとう」

今日で繰り返し200回。いつもいつも私の誕生日は私に取り入ってやろうと鼻の下を伸ばす奴ばかり。私はそれが嫌で嫌で堪らなかった。
めでたいめでたいと目の前で開かれる宴も、正直マンネリ気味。
どうしたってこう変わりない世界に色を求めろと言うの?
それこそ、難しいに決まってるじゃない。こんな小さな隠れる様に暮らしてる集落の長を務めるよりも難しいわ。それを分かっていて彼等は私を持て囃すのかしら。
だとしたら最悪だわ。ほんと、最悪。

「…ごめんなさい……私、今日は気分が悪いの」

ほら、そこ。
口元の笑みが隠しきれてないわ。どうせ、やっと終われるんだわなんて考えているのでしょう?ああ、最悪よ、最悪。
どうして私、狼になんて生まれちゃったのかしら。

「私は部屋で休んでるわ。皆、楽しんでね」
「そんな、滅相もない!主役のおらぬ宴会など虚しいだけです!」

そう。じゃあ、申し訳ないけど、今日はお開きね。
そう言えたら良かったのでしょうけど、私は何も言えず、ただ頷くしかなかった。
違うわ。断じて、寂しいだなんて、思っちゃいないもの。
……違うわよ。絶対に。私らしくもない。

「…おやすみなさい。皆、良い夜を」

いつもの、変わらない誕生日だった。
孤独の、誰一人として取り入ってやろうとはする癖に、私の粋には入ってこない。微妙で、気持ちの悪い1日。
ああ、最悪だわ。
私の口からは、大きな溜息と、小さな小さな舌打ちが漏れた。
部屋に入る瞬間に、ぼそりと、誰かが呟いていたかしら。

「化物の癖に」

…ええ、確かに。私は、化物かもしれないわね。
そこで違うと大声を出せないのが、とっても悔しいわ。

私は狼の子。母様に愛されて、父様に強く育ててもらった私は、誰よりも優秀な狼だった。それを苦に感じたりはしないけれど、それで周りに畏怖を抱かれているのは、大変不本意。不快極まりないわ。
女だから弱くて当たり前?そんな事言ってたら人間に殺されちゃうわよ。女だから男に守られて当然?そんなだから男共は怯えてろくに力をつけないのよ。
ああ馬鹿らしいったらありゃしないわ。

「…私だって、ただの狼なのに」

人間にも狼にも受け入れられない。
こんなの、文句以外に言う言葉なんてないわよね?
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