プワソンダヴリル〜甘い嘘は愛する君だけに〜
凛子は普段あまり酒を飲まない。
そんなこいつが飲むときは、決まって何か辛いことがあったときだ。

「…で、何があったんだよ」
「なんで何かあったってわかるの~」
「それぐらいわかる、何年お前の面倒見てると思ってんだ」
「わーん、宏ちゃん~」

抱き着いてこようとこちらに両手を広げる凛子の腕を優しく元に戻して、代わりになだめるように頭を撫でる。

…ちょっとはこっちの気持ちも考えて欲しい、なんて思いながら。

「彼氏が浮気してた」
数分後、少し落ち着いてからぽつりぽつりと話し出した凛子の話に黙って耳を傾ける。

「なんでいっつもこうなんだろう…」
目を伏せた凛子の綺麗な白い肌が、少しずつ赤みを帯びていく。

凛子は昔からモテるのに、男を見る目が全くない。
なんでそんなにっていうくらい、見事に訳アリな男ばかり選んでいくのだ。

ていうか紳士な男なんてこの世にいないのに、凛子は簡単に人を信用しすぎるんだよ。

「凛子」
「ん?」

名前を呼ぶと、今にも溶けてしまいそうな凛子の瞳が上目遣いにこちらへと向けられた。

その表情は、まずい。俺の歯止めがきかなくなる…

ほんと、男のことわかってない。
こうやって傷ついたお前のことを慰める度に俺がどれだけ我慢してるか、なんでわからないんだ?

いつもギリギリで保たれている理性を、本能が脅かしていく。

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