【短編】あなたとの距離、近くて遠い
「……すいません。失礼でしたよね」
久保田さんを見つつ、焦りながら声を発した。
「いいえ、そんなことないですよ。気になりますよね、年齢って」
久保田さんは微笑みながら、優しく私に話しかけてくれた。
優しいな、本当は失礼なことなのに。
「…そうですね。気になりますね」
そう言って、なぜか上を見上げてから私に話した。
「…僕、こう見えて、26歳です」
上を見上げてから、私の顔を見た。
「…そうなんですね」
私は一言しか久保田さんに言えなかった。だって、年齢を聞いても、素敵な人だって思ってしまった。
看護師の久保田さんではなく、男性の久保田さんとして。
この気持ちは、ただの陽性転移なのに。
なんでその些細なことで、ドキドキしてるの。
「…花野さん。どうしました?」
久保田さんは心配そうに私を見てきた。
そんな顔をしないでよ。
「…大丈夫です。質問に答えてくれてもらって嬉しいです」
私は久保田さんに言ってから、笑顔で答えた。