7年目の本気
別世界

 2月に入ってから匡煌さんも私も何だかんだ
 野暮用が多くなって、デートの余裕はおろか
 電話でのおしゃべりやメールすら満足に出来ない
 くらい忙しくなった。
 
 利沙に前々から聞かれていた”女子会”への
 お誘いにも答えられない日が続いて。
 
 そんなとある週の終わり。
 
 匡煌さんから
 
 ”ウェスティンホテルのロビーに夜6時、
  目一杯オシャレしておいで”
  
 なんて、久々にお誘いメールを貰った。
 
 私はあまりの嬉しさに利沙も誘って、
 時間ぴったりに待ち合わせ場所のホテルへ
 行ったんだけど……。
 
 
 エレベーターから一歩踏み出したそこは ――

 一面温かい光の大洪水。
 華やかで、きらびやかにライトアップされていた。

 文字通りの別世界。  

 場内はどこもかしこも着飾ったゲスト揃い。

 そんな中、匡煌さんのお誘いメールにもあった通り
 目一杯お洒落してきたけど、周囲のゲストさん達から
 比べたら当たり前のように見劣りする私達は
 とても浮いた存在。

 けど、テレビや映画で良く見かけるような芸能人も
 たくさん出席している中で。
 匡煌さんはさほど派手なドレスアップをしている訳
 じゃないのに、一番目立っていた。
 
 こんな素敵な男性が自分の彼氏だなんて、
 ホントに鼻が高い。


 このパーティーは主に関西を拠点にしている
 マスコミ業界の企業が多く集っているという。



「――Yo(よお)匡煌」

「おぉ、圭介、お前も来てたのか」


 彼の事を”匡煌”と、親し気に呼び捨てした人物は、
 年の頃なら彼と同年代位、スラっと背が高くて、
 そのスタイルに仕立ての良い上品なスーツが
 似合いの男性。

 匡煌さんからも”圭介”と、
 親し気に呼ばれたその男性は
 匡煌さんと挨拶代わりの軽いハグと握手を交わし、
 私を見た。


「―― 彼女がうわさの?」

「ああ、和巴だ――和? 俺の従兄弟で各務圭介」

「圭介さん……あっ! 
 もしかして、亜里沙ちゃんの ――?」

「えぇ、亜里沙の父です。あの時は本当にお騒がせ
 してしまったようで」

「いえ、私も早とちりしてましたから」

「有くんから話しには聞いていたけど、ホント
 可愛らしいって表現がしっくりくる子だね」


 そんな事、面と向かって言われると
 さすがに恥ずかしい……。


「匡煌が大事に大事に囲い込みたくなる気持ちも
 分からなくはないな」

「もう、圭介さんったら……」

「無粋な男にはもったいない――和巴さん? 
 こいつのお守りは骨が折れるでしょう」


 その言い方があまりにも実感がこもっていて、
 私は思わずプッと小さく吹き出した。
  
  
「圭介、あまり余計な事は吹き込むなよ」


 って、拗ねたように頬を赤らめた彼も何だか
 お茶目。

 トゥルルル~~、彼のスーツの内ポケットから
 優しいオルゴールの音色。

 匡煌さんは”ちょっと失礼”と、
 そのポケットから出したスマホの対応をしながら
 人気の少ない方へ行ってしまった。

 で、しばし私は初対面の圭介さんと2人きりに。
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