7年目の本気

青天の霹靂

ジリリリリリリ~ン ――――。

 枕元に置かれた目覚まし時計がベルを鳴らし
 続けている。

 無人だと思っていた布団上の小さな膨らみが
 モソモソと動いて、掛け布団の中から
 ぬぅ~と伸びた手が時計のベルを止めた。

 そのひと息違いくらいで部屋のドアが乱暴に開けられ
 『和巴! 大変・大変。一大事よ』と
 利沙が飛び込んで来た。
 
 掛け布団の中から和巴のくぐもった声。
 
 
『ごめん、もうちょい寝かせて』


 利沙は有無を言わさず和巴が引っ被ってる
 掛け布団を引っ剥がした。
 
 
「これ見なさい」


 と、朝刊らしい新聞紙を和巴へ突きつける。
 
 和巴は寝ぼけ眼を、擦り・擦り ――
 
 何回か目を瞬かせ、その新聞紙の一面記事を
 見て。
 
 
「……う、そ」


 その、トップ記事には京都地方裁判所が、
 嵯峨野書房の民事再生法手続きに於けるスポンサーに
 各務書店を指定したと記載され。
 監督委員に同社役員の宇佐見匡煌氏が着任したと、
 知らせていた。
 
 
「その様子だと、彼からは何も知らされて
 なかったの?」
 
「それどころか、匡煌さんが各務書店の役員だったって
 事も今知ったよ……」
 
 
 (今の今まで、彼は”各務”本社広報のフリーカメラマン
  だと思っていた)
  
 
「どうするのよ。このままじゃあんたと彼……」

「どうするも、こうするも、今さら就職取り消しは
 出来ないし。彼には ――」
 
 
 そこで言葉を切ったのは、匡煌が結婚するのは
 自分じゃないと言いたくなかったから。
 
 
「彼には?」


 和巴は答えず、パッと起き上がって出かける身支度を
 する為、バスルームへ向かった。
 
 
「ちょっと和巴ぁ」       
  
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