7年目の本気
後日談。学校にて ――

「―― で、その後、どうしたん?」


  手元にあるA定食には目もくれず、
  話しの続きに目を輝かせる親友・国枝 利沙。
  
  
「どうしたって……速攻、家に帰っただけよ」


  利沙の隣にいる男子・国枝 あつしが
  嘆くように呟いた。
  
  
「あぁ ―― おらぁ、その見合い相手につくづく同情
 するよー。キン蹴りの痛みは男じゃねぇと分からん」
 
 
  あつしは、利沙の双子の弟だが、二卵性なので
  ちっとも似ていない。
  
  
「んなの、分かんなくて結構だけど ―― にしたって
 なぎぃー、あんた何考えてんのー」
 
「え?」

「バツもあっておまけにコブ付きだけど、純総資産
 3980億円。こんな男の何処が不満なの? いい?
 あんたには左うちわのバラ色な結婚生活が確約された
 ようなもんなのよ!」
 
「左うちわのバラ色な、ねぇ……」


  ため息をつき、伏せかけた視界の隅であるモノを
  捉え、ゆっくりそちらへ目を向けた。
  
  1枚板の大きなガラス張りの窓の向こうは、
  正面玄関に隣設された駐車場。
  
  今、そこへ4000ccクラスの
  大型スポーツクーペが1台停まった。                              
      
  和巴と同じくそれに気が付いた数人の男子が
  ざわつき始める。
  
  あつしも気が付いた。
  
  
「うわっ、すっげぇー …… 本物、初めて見た……」

「なに、アレ、そんなに凄い車なの?」


  とは、車(メカ)音痴の利沙。
  
  
「たった500万台しか生産されなかった限定販売車。
 おそらく中古でもうン千万は下らないだろうな」    
  

  車好きな男子達はその車の優美なフォルムに
  目が釘付けで。
  
  女子達は、その車から颯爽と降り立った男に
  目を奪われ、ギャーギャー騒ぎ出す。
  
  
『チョーかっこいいんだけどー』

『モデルか俳優さんかなー』

『誰の父兄やろ』

『何の用事で来はったんかなー』


  何の用事だろうと、和巴にとっては迷惑この上ない
  来訪だった。
  
  女子達の注目の的は宇佐見 匡煌。
  
  見合いの締めくくりに(?!)、
  和巴から股間を蹴り上げられた男だ。
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