This Is Love Story
もし、昴兄や佑が彼のようになっていたら…そう思うとやっぱり放っておけなかった。
私は、来た道を走って引き返す。
常にカバンに入れていた折り畳み傘を広げて、彼の肩に置いた。
「大丈夫ですか…?」
濡れて下がった長い前髪のせいで彼の顔は全く見えなかったけど、たぶん私と同じくらいの歳だったと思う。
私は血が滲んだ彼の口元をハンカチで拭いて、ポーチから取り出した絆創膏を貼る。
「自分のこと、大切にしてください…。」
私にとっての昴兄や佑のように…
きっとこの人にも、心配して帰りを待つ誰かがいるはずだから。
私はそれだけ言い残して、帰路へついた。
……そういえば、そんなこともあったな…。
あの人、大丈夫だったのかな…?
なんてひとりでぼーっと考えていると、月島さんと目が合う。
なにか言いたげな彼。
「…その時の男………」
─────バンッ